奇妙なのは、それなのに「地理音痴」が一般的なアメリカ人には多いように見受けられる、ということです。古い話ですが、ベトナム戦争中に「カンボジアというのはアフリカにある国だ」と真顔で私に教えてくれたアメリカ人婦人がいたくらいです。
「National Geographic」という世界各国を紹介する素晴らしい雑誌がアメリカで昔から発行されています。この雑誌は別に反戦運動の機関誌でも、人権運動の広報誌でもありません。この雑誌を出版している「National Geographic Society」の会長が2002年に、こう嘆いています。
National Geographic recently released the Roper survey of geographic literacy which illustrated Americans' poor knowledge of geography. National Geographic Society president John Fahey said it is a cultural crisis that Americans are so unfamiliar with the world around them. I was stunned by the results. It is surprising and sad to realize that less than 20 percent of our young people can locate such in-the-news countries like Iraq, Afghanistan and Israel.
(National Geographicの調査によると、アメリカ人は地理の知識がない。自分たち以外の世界についてこれほどまでにも無知であるのは文化的な危機である。調査結果には仰天した。イラク、アフガニスタン、イスラエル、といったニュースに頻出する国がどこにあるのかを知っていたのは、アメリカの若者達の20%以下だったということは驚くべきことであるし嘆かわしいことである。)
このことから分かるように、9.11テロの犯人がサウジアラビア出身なのに、それの報復としてアフガニスタンやイラクに攻め入って何千何万という一般市民を殺害することに一般的アメリカ人は何の違和感も感じていません。「アラブ」、「回教徒」だけがキーワードになっています。中国が悪さをしたから韓国を征伐しよう、というのと同レベルのトンチンカンですが、本人達は気にしていません。
米国内で厭戦気分が盛り上がっているのも、「アメリカの兵隊がこれではたまらない」という自分勝手な理屈によるものが大半で、「相手国の一般市民を大量殺害してしまって申し訳ない」という心情はアメリカ人には露ほどもありません。
こんな論理で自国を侵略され、巻き添えを喰らって殺されたり拷問されたりする方はたまりません。ましてや、こんなヤカラに迎合して、やれ国際貢献だ、人道支援だ、と屁のつっかえにも成らない下っパタラキの援軍を派遣するのは筋違いです。