OSX Tigerを早速使ってみました (2005年5月9日)

新しいものが好きなので、早速発表されたばかりのOSX Tigerをインストールして使ってみました。「Tiger Reality, Longhorn Fantasy」、すなわちAppleのOSであるTigerは完成しているのに、Microsoftの次期OSである「Longhornは絵空事だ」という威勢の良い掛け声にワクワクしながら導入してみたんですね、OSX Tigerを。

ちなみに、環境は一番安いデスクトップG5 (Dual 1.8GHz)、搭載しているSDRAMは1GBです。毎日作業に使っているマッキントッシュです。


それでは、辛口のインプレッション、めぼしいところを箇条書き。


【OSX Tigerインストール方法選択】

「上書き」が正解みたいです。「古いOSをアーカイブ保存してOSX Tigerを新規インストール」を選ぶとドライバ類、そしてAtokの再インストールが必要となりました、私の環境では。Photoshopなども、ファイルをDrag/Dropで開けないなどのトラブルがありました。もっとも、これまた、Photoshopを再インストールすることによって解決しました。

【ファインダー】

OSXの良き伝統を引き継いで、OSX Tigerのファインダーも使いにくくトロイままです。特に日付順でリスト表示にした場合、作業を終えたファイルがなかなかトップに上がってきません。いや、マッキントッシュがますますWindowsの使い勝手に近づいてきていますな、ここら辺は。クロスプラットフォームの精神かな、こりゃ。

で、ともかく、OSX Tigerのファインダーですが、これの使い勝手は、ずいぶん前からあるIimori氏作フリーウェアのCoelaに軍配が上がります。軽くてサクサク動くし、ファイル更新もリスト表示に瞬時に反映されます、Coelaは。「賞味期限切れ」のメッセージが出ますが、そのまま使えます。

ついでに、Dockにも改善、改良された痕跡はありません。Path FinderまたはDragThingのプロセスドックでOSX Tiger純正のDockを代用させる手もあるんですけど、Path Finderはいかんせん重たいし、どちらも有料のシェアウェアですし、ということで、おすすめは、これまたIimori氏のフリーウェアMr.PCです。小さくて、軽い。ネーミングが今ひとつ魅力的でないのが残念だけど。

【Spotlight】

ゴミです。Sherlock同様、索引を延々と作る作業に時間が掛かります。インデックス構築作業中にはここからの検索を試みることは非現実的です。

インデックスの構築が終了したら鬼のように速い検索ができるようになるのかというと、これが鬼のように遅い。ハードディスクがガラガラと音を立てるばかりで、肝心の捜し物が出てくるまでに大変時間が掛かります。

検索語を打ち込むと同時にインクリメンタルで検索を始めますが、これが結構くせものです。例えば、「elephant」と検索語を打ち込むと「el」くらいからインクリメンタルのサーチが勝手に始まってしまうので、ムダに「electric」とか他の「el」語をゴソゴソと検索し始めてしまいます。そしてこの馬鹿げた作業のせいで、なんと検索窓に検索語を最後まで入力することさえできなくなります。

これほどのろいインクリメンタルのサーチなら、ユーザーが検索条件を確定してから検索を始めてくれた方が効率的ですし、検索速度も上がるとはずです。そのオプションさえもユーザーに提供していないてところがいかにもアップルらしい傲慢さで、鼻持ちならないものがあります。

ただし、画像のサムネールの表示は、さすがにマッキントッシュ、きれいです。

【日本語文字化け】

コピー/ペーストで見事に文字化けする場合が多々あります。仕方なくアップル純正の「テキストエディット」に一回通してやって、そこからのコピー/ペーストで他のアプリケーション書類に貼り付け直すというお作法になります。この点においてはOSX TigerもPantherも同罪です。何考えてんのかね、全く。

【Adobe Goliveとの相性】

依然、最悪です。日本語変換をした途端に勝手にGoliveが終了してしまうことがよくあります。犯人がGoliveなのかOSの方なのかは不明ですが、なかなかスリルがあります、作業をしていると。

【Photoshop CS、遅くなりました】

別に速度向上は体感できません。逆にレイヤーの作業に異様に時間が掛かるようになってしまいました。待っててイライラします。これ、どっちが悪いのかな、PhotoshopがOSX Tigerに完全対応していないのか、それともTigerに非があるのか、不明です。ま、そのうち、すり合わせてこなれていくことと思われます。

【iChat起動せず】

Pantherの時にもよくありましたが、iChatが開かない、というトラブルがOSX Tigerでもあります。私のところでの解決策は、一度イーサケーブルを引っこ抜いておいてiChatを起動させておき、開いたところでイーサケーブルを戻しておく、という非常に原始的な方法です。Appleはチャットアプリケーションの技術が劣っているようなので、パクリ元のAOLにiChatを一旦お返しして、純正AIMを素直に拝借した方がよさそうです。

【Safari】

いまさら「RSSに対応」なんて言われてもねえ。とっくにFirefoxに先を越されてる、ってえの、そんなの。

【日本語変換】

ことえり、馬鹿のままです、一貫して。毎回OSのバージョンが上がるごとに「お、今回はことえりが少しマシになったよ」という声を聞きますが、はい、そんなの気のせいね、全く。私が使っているシャープの携帯電話に付随している日本語変換の方が比較にならないほど優秀です、OSX Tigerに付いてくる「ことえり」なんかより。

マッキントッシュ機に純正で使える日本語のインプットメソッドが今まで付随してきたことはありません。この先もないらしいな、この調子だと。

【日本語音声読み上げ】

マッキントッシュでは随分昔から音声読み上げ機能が使えます。しかし日本語の読み上げとなると、これが全然駄目です。

いわゆるWindows系のコンピュータを指す「PC機」のOSがまだウィンドウズではなく、DOSだった太古からマックではテキストを音声読み上げさせることができました。この頃のいわゆる「PC」では夢のような機能でした。

しかしウィンドウズのOSがXPになった時分からこの「音声読み上げ」の機能である「text to speech」ですが、マイクロソフトの逆転勝ちとなりました。漢字、仮名交じりの日本文を流暢に読み上げます。こら、アップル、しっかりしろ。

【Dashboard】

なつかしいデスクアクセサリーの復活です。Konfabulatorには足を向けて寝ることはできないねえ、Apple社。純正である分、OSX TigerのDashboardの方がサクサクと軽やかに動く、という印象を受けました。

【暴走】

OSXタイガーにしてから一番印象的だったのは、たいした室温でなくても突然ファンがものすごい勢いで爆音を立てながら回りだし、画面には「再起動してください」とのメッセージが表示されることです。

コンピューターの冷却ファンにこれほど大きな音をたてる能力があったとは驚きです。さすがにアップル、出来が違います。もうね、あとちょっとで離陸してマッキントッシュが窓から飛び出すことができるほどの立派な爆音です。

これが熱暴走なのか、ただの空騒ぎなのかは不明ですが、OSX Tiger を導入するまで、こんな怪しげな現象を目にしたことはありません。

初期OSXのカーナルパニック(kernal panic)で、突如すべてが静かに死んで全く使い物にならなくなる現象には笑えましたが、今回のOSX Tigerによって引き起こされる暴走は大音量でファンが回り続けるという物理的な誤作動を伴う分、無人の環境においては危険であり、罪深いバグです。

OSX TigerをインストールしてあるマッキントッシュG5機を留守中に電源ONにしておくことは火事の原因になるのではないかと心配です。

ここまで不安定だと最早OSとしては失格です。見た目は派手かもしれないけれども、OSX Tigerは、この点において信頼のできない劣悪なOSです。

マッキントッシュを20年来使い続けてきましたが、物理的に「これはやばい」と思ったのはOSX TigerとG5の組み合わせが初めてです。こればかりは笑い事ではありません。

【マウスとメディアイジェクトボタン】

OSとは別の問題ですが、マッキントッシュの「一つボタンマウス」、これ廃止して、すべて2つボタンマウスにするべきです。いまさら一つボタンなんて機能的でも美しくもありません。過去の遺物だってえの、そんなもん。20年前にはマウスで操作する対象も少なかったので一つボタンで充分間に合いましたし、かえってボタン一つの方がすっきりとしていました。しかし、マッキントッシュのOSにコンテクストメニューが登場して以来、コマンドの数が増えてきているのに、いちいち「左手でコントロールキーを押しながらマウスをクリックせよ」との仕様は、ユーザーに不便を強いるだけの劣悪なインターフェースです。

「ウィンドウズ機が2つボタンだからマックは伝統の一つボタン」とうだけの往生際の悪さに使い手は辟易しているのに気が付かないのか、アップルは。

手は2つしかない、そしてその2つが自由にならない人達もいる、という単純な事実が納得できないのかね、アップルは。

初期のアイマックにアンパンみたいな丸い形をした史上最低の手に馴染まないマウスを標準装備して出荷していたことを思い出しました。ユーザーの「使いにくい」という声に、「慣れればこの形が一番」という開き直った馬鹿な対応をしていたアップル社のイヤラシイ保守的な体質にはウンザリです。

ついでに言うと、メディアの取り出しは伝統的にキーボードから行うお作法になっているため、ハード的なイジェクトボタンが付いていません。そう、ノッペラボウなんですね、マッキントッシュ機ではメディアの取り出し口付近は、昔から。ソフト的な操作が一番安全、ったって、OSもキーボードも絶対じゃないんだってば、そんなもん。こじれた時には機械的な操作でメディアを取り出せなければ不便です。

マッキントッシュSE、Plusの頃から現行機まで「メディアが取り出せなかったら針金のようなものを入れて突っついてみてください」なんていう愚かしい対応策をユーザーに強いています。どれどれ、G5付属の取扱説明書を読んでみましょう。「穴に、まっすぐ伸ばした大きなペーパークリップを注意して差し込みます。トレイが開くまで押します」と書いてあります。

針金で突っついて操作しなきゃならないコンピューターがまかり通ると思ってるところが噴飯ものです。正気か、ってえのお前達、こら、アップル!

【Steve Jobsのスピーチ】

'You've got to find what you love,' と題したスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式(2005年6月12日)でおこなった講演のテキストが下記ページに掲載されています。素晴らしい内容なので一読の価値があります。


趣旨をざっと要約すると:

(1)自分にとっておもしろいと思えることを妥協せずにしなさい。

(2)今無駄に思えるようなことでも、後から振り返ってみると芸の肥やしになっていたりすることが多い。

(3)今日一日が人生最後の日だと思って、納得のゆく過ごし方をしなさい。

(4)ハングリーであり続けなさい、そして一般に「馬鹿だ」と言われるようなことであっても、自分にとって納得のいくことをやり続けなさい。


http://news-service.stanford.edu/news/2005/june15/jobs-061505.html

市村佐登美氏による日本語訳は:

http://pla-net.org/blog/archives/2005/07/post_87.html


'You've got to find what you love,' Jobs says

This is the text of the Commencement address by Steve Jobs, CEO of Apple Computer and of Pixar Animation Studios, delivered on June 12, 2005.


スタンフォード大のこのページがなくなってしまうといけないので無断転載したいところですが、そうすると、やれ「著作権が...」とか「勝手にそんなことをする権利があなたに...」とか、2チャンネルやゴミ掲示板のノリでイチャモンをつけてくるシタリ顔の馬鹿が必ず出てきて煩わしいので、それは控えておきましょう。

しかし、この原稿、オンラインで見つからなくなったら私に連絡してください。テキストをメールで送付して差し上げます。

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